A.ランゲ&ゾーネは、ウォッチズ&ワンダーズ2022で、伝統に倣った仕様でありながら現代に相応しい進化がなされたミニッツリピーター機能を搭載する「リヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーター」を発表した。その進化とは、より早く時刻を知ることができる一時休止省略機構と、ミニッツリピーター作動中にリュウズを引き出せなくする保護機構、打鍾を正確に聴き取りやすくするハンマーブロッカーの3つである。今作はブティックのみの取り扱いで50本限定となる。
ブランドの伝統に倣うミニッツリピーター
腕時計の鳴り物機構の中でも、分単位の正確さで作動するミニッツリピーターは、最も難しく奥が深い複雑機構のひとつである。A.ランゲ&ゾーネにおけるミニッツリピーターの歴史は、19世紀末の懐中時計までさかのぼり、2013年にはラトラパント・クロノグラフや永久カレンダーなどを多数搭載するグランド・コンプリケーションでミニッツリピーターを復活させている。さらに、15年にはデジタル表示された時刻と打鐘数が一致する「ツァイトヴェルグ・ミニッツリピーター」を発表し、その技術力の高さを証明してきた。
今回発表された「リヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーター」の打鐘機構は、伝統的な形式に則ったものだ。すなわち、低音と高音に調律されたふたつのゴングを備え、ケース9時側のスライダーを操作すると、低音で正時、重複音で正15分、高音で分の数を鳴らす。そして今作は、この伝統的な打鐘機構に3つの進化が加えられている。
ひとつめは、ハンマー打ち機構の一時休止省略機能である。任意の時間の0分から14分までは、正時を打った後に正15分を打つ必要が無いため、従来の機構では正時から少し間をおいて(一時休止して)分を打鐘する。しかし今作はこの一時休止を省略し、正時の後に直ちに分を打鐘する。これにより、一時休止分だけ時刻を早く知ることができる。
ふたつめは、打鐘機構破損防止の保護機構である。従来は、ミニッツリピーター作動時にリュウズを引き出すと故障の原因となっていたが、これを防止するために、作動中はリュウズが引き出せない仕組みとなっている。
3つめは、ハンマーブロッカーである。これは、ハンマーがゴングを叩くたびに、一瞬だけハンマーを初期位置に留め、ハンマーが反動で再びゴングに当たらないようにする機構である。これにより、意図しない音の発生を抑えることができ、打鍾の音を聴き取りやすくできる。
また、音質も高められている点が特徴である。明るく澄んだ音を長く響かせるため、ケース素材であるプラチナの音響特性と調和するようにゴングを手作業で調整し、組みつけている。部品を組み立ててはテストを行い、不十分であれば分解して部品を再調整することを繰り返し、今作は完成に至っている。そのため、仕上げにかける時間の大部分は、完璧な音響を作り上げる事に費やされている。
このように組み立てられる手巻きムーブメント キャリバーL.122.1は、他のラインナップと同様にランゲ最高品質基準に準拠するものである。特に今作のハンマーはブラックポリッシュが施され、手作業で曲げられたゴングも艶やかに研磨されている。
"構造とデザインが一体でなければならない"との基本理念に基づいたケースは、ムーブメントと裏蓋のクリアランスが詰められており、見栄えがする上にケース厚さは9.7mmに抑えられている。また、ケースサイドの目の細かいサテンとポリッシュの仕上げのコントラストにも注目だ。
このムーブメントを収めるケースは、同ブランドの"構造とデザインが一体でなければならない"との基本理念に基づいており、プラチナ950製ケースは直径39mm、厚さ9.7mmに抑えられ、側面にはサテン仕上げが施される。またダイアルは、ゴールド無垢の表面をホワイトエナメルで覆った自社製のものであり、メインダイアルの外周部と中央部、スモールセコンドが別パーツとなっており、手作業でひとつのダイアルに繋ぎ合わされている。
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